エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
「いやぁ、まさか知らないなんてさぁ。同期だし、当然知ってると思ってたよ。本当にごめんね」
「いえ。高梨とは結構長い付き合いだし、言いふらしたりするような人間じゃないってことは知ってるので。気にしないでください」
「鈴ちゃん先生が親戚なもんだからさぁ、うっかりしてたよ」
「あぁ、そういえば、そうらしいですね」
ついさっきまで頭を下げていたはずの窪塚と入れ替わるように、今度はおじさんの方が謝っていたようだ。
それから、これまたおじさんにより、私との関係性もバラされていたようだったこと。
そのことをなぜか窪塚は既に知ってた風な口ぶりだったことも。
もう窪塚の父親のことしか眼中にない私は、そんなこともなにもかも頭の隅に追いやって、いきなり大きな声をあげ。
「ちょっ、ちょっと窪塚ッ! あんたの父親って、あのッ、神のッーー」
あろうことか、窪塚の父親の名前を暴露しかけた私のことを二人がギョッとしたように凝視した眼と、私の吃驚眼とがかち合うこと、おそらく数秒。
その次の瞬間には、私の口は血相変えて迫ってきた窪塚のゴッドハンドによって見事に封じ込まれていたのだった。
さすがは『神の手』と呼ばれている天才外科医の息子だけあって、実に見事な仕事っぷりだった。
ただでさえこの前のことがあって、顔を合わせるのが嫌で接近を避けてたっていうのに。
あの夜以来の急接近、急密着に、私の心臓は尋常じゃないスピードでフル稼働を始めてしまっている。
現在の状況を詳細に説明すると。
大きな柱の側面に窪塚の身体に覆い被さるようにして、背中から押しやられて口を大きな掌で覆われている私は、ギロリと睨みを利かせた切れ長の漆黒の双眸に見据えられて動くことさえままならない有様だ。