エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
展望台へと連れてこられた私は、心地よい夜風がそよそよと流れゆくなか、相変わらず手をつないだままの窪塚の隣で、眼下に広がる都会の街を縫うようにして行き交う人波や車の流れを静かに眺めていた。
そのお陰もあって、酔いもいくぶん醒めてきて、窪塚のことを過剰に意識してしまってた気持ちの方もずいぶんと落ち着きを取り戻しつつあった。
そろそろ帰る頃合いだろうと、私がお手洗いに行って窪塚の元へ戻ってきた時のことだ。
「そろそろ行くか?」
「……あぁ、うん」
窪塚にそう尋ねられ、夜風があんまり心地よかったせいか。
ーーもう少しこのままでいたいなぁ。
なんて、ほんの一瞬とはいえ、血迷った願望を抱いてしまった自分自身に対して、盛大に戸惑っているところに、
「その前に、ちょっと耳見して」
「……?」
窪塚から唐突にそんなことを言われ、訳がわからず首を傾げてその場で立ち尽くしていると。
眼前に立ち塞がるようにして迫ってきた窪塚の手により、耳にかかっていた髪をそうっと首に撫でつけるようにして掻き分け、露わになった耳朶を指の腹で優しくなぞるように撫でられてしまい、ゾクゾクッと身体が泡立つような感覚に襲われた。