エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 あの頃は、まだ窪塚のことを好きだという自覚はなくて、マイペースで強引な窪塚の言動に腹立たしいという感情しかなかった。

 それが今では、窪塚のために、おしゃれしたり、メイクまで頑張ったりしてるなんて、なんだか不思議な気分だ。

 ーーあっ、いっけない。脱線するところだった。

 医局の中央にある大きな丸テーブルではなく、サイドにズラリと並べられている各々に与えられているデスクの一番端っこに位置する自席で、ノートパソコンに向かい直し再び事務作業へと意識を集中させかけたところで、不意に声をかけられて。

「鈴先生ッ!」

 朝から底抜けに明るいその声のほうに振り返ると同時。

「おはようございますッ!」
「……お、おはよう」

 元気に挨拶をしてくれた研修医の羽田《はだ》がニコニコと屈託のない笑顔を振り撒いていた。

 羽田は、この春医大を卒業したばかりの研修医になりたてほやほやで、若い女性職員の間では、『ワンコ系イケメン王子』などと呼ばれているほどの人気者だ。
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