エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
これって、この場を収めるためのお芝居なのかな?
否、でも、いくら両親が出てきたからって、ただのセフレでしかない相手のために、こんなにも必死になって、土下座までしないよね? 普通。
ーーてことは、これは窪塚の本心ってことでいいんだよね?
そこまで思考が至ると同時に、これまでの窪塚の言動のあれこれが、あたかも走馬灯のように、脳裏に次々と浮かんできて。
幼馴染みのことだったり、セフレを強要するのに画像で脅されたりと、色々と引っかかることはあるにはあるけど。
これまでも窪塚には、幾度となく助けられてきたし、想わせぶりなことをされたり言われたりしてきたのも事実だ。
だからこそ、私のことを好きなんじゃないかって、あの仮説がことあるごとに浮上してきたわけだし。
やっぱり、あの仮説は勘違いじゃなかったんだ。
ーーヤダ。どうしよう! 夢みたい。メチャクチャ嬉しい!
非常事態だというのも忘れて、心ここにあらず。
私はもうスッカリ恋する乙女モード全開になってしまっていたのだが……。
直後、父に向けて依然頭を下げ続けている窪塚に対して、父は待ってましたといわんばかりに、僅かにだが片方だけ口角を引き上げてみせた。
そうして、どこまでも冷ややかな抑揚のない淡々とした声を容赦なく放ったのだ。
「どんな罰でも受けるというのなら、鈴とはもう二度と会わないで欲しいといったら、そうしてくれるということかな?」
途端に、恋する乙女モード全開で浮足立っていた私の心は、急激に急降下の一途を辿ることとなって。
ーーはっ!? パパってば、私のこと差し置いて何勝手なこと言ってくれてんの? そんなの絶対嫌だ。
ようやく、窪塚の気持ちが分かったというのに、冗談じゃないーー。