エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
「ちょっ、窪塚!?」
まさか引き止められるとは思ってもみなかったので、驚いて放った私の声と。
「ちょっと、隼。鈴が怒るのも無理もないわよ! いくら親だからって、そこまで口出す必要ないんじゃない?」
「侑李は黙っててくれないかい? 僕は鈴と話してるんだから」
「何言ってるのよ。鈴は私の娘でもあるのよ。隼こそもう黙ってて! 私が話すからッ」
私と同じで、頑なな態度を崩そうとしない父の態度にとうとう怒った母が、なんとか父の暴走を止めようとしてくれているそれらの声とが響き渡るなか。
私の動きをいともたやすく制した窪塚が、突如大きな声を放った。
「あの、非常に差し出がましいことだと思うのですが。こんなことになったのは私に責任がありますので、少しだけお時間いただけませんか? どうか、お願いしますッ!」
かと思えば、私の手首を急に開放した窪塚が目を見張る速さで座布団から退くと、畳に頭を擦りつけるようにして土下座を決め込んでしまっていて。
「ーーえ!? ちょっと、窪塚。何やってんのよッ! そんなことまでしなくていいからッ!」
吃驚した私が慌てて窪塚の肩を掴み揺すって止めようとするも、普段から鍛えられている窪塚のことを止めることなどできる訳もなく。
けれどなんとか止めようと、窪塚の肩を揺すり続けることしかできないでいると。
正面の父に頭を下げたまま、必死になって紡ぎ出した窪塚の言葉の数々に、私はただただ驚くばかりだった。
「鈴さんに無断外泊をさせておいて、こんなこと言っても信じてもらえないかもしれませんが。鈴さんとは、いつか、結婚を見据えた真剣なお付き合いをさせて頂きたいと思ってました。
こんなことになってしまい、認めてもらえるなんて思ってはいません。どんなに責められても仕方ないと思ってます。
けど、鈴さんは何も悪くありません。責めるならこの私にしてください。どんな罰でも受けますから。どうかお願いしますッ!」