エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
「……あぁ、どうも。まぁ、そうなんですけど。逢わないって約束してるんで、どっちみち逢えないんですけどねぇ」
「あー、そういえば、親父がなんかそんなこと言ってた気がするわ」
またかよ。もうそのセリフ聞き飽きたっつーの。
それより、高梨が落ち込んでるっていう、そっちの方が気にはなるが、だからって何もできねーしな。
にしても、他人事だと思って暢気だよなぁ。譲る院長といい、樹先生といい。まったく。
樹先生の心遣いはとてもありがたいことではあるのだが、現段階ではなにもできなこの現状にヤキモキしていたために、そのたびに胸の内でこんな風に悪態をつくことしかできないでいた。
「……そうですか」
「あぁ、そういえばさぁ。医大に勤めてる弟から聞いたんだけど。田所《たどころ》教授(脳外の教授)の娘さん。婚約の話、白紙になったんだってな?
なんか、元彼との間に子供がデキちゃってたとかで。今、医大の職員の間じゃ、その話題で持ちきりらしい。相手の名前、なんつってたかなぁ。確か、窪塚とも医大の同期だったんじゃなかったっけ」
田所教授の娘の相手とは、未だに高梨が引き摺っている元カレであり医大の同期でもある藤堂のことだ。
樹先生経由で、喉から手が出るほど欲しいと願っていた高梨の父親の情報ではなく、俺にとっては一番聞きたくなかった情報が舞い込んでくることとなった。