エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

「ええ、確かに術野《じゅつや》も狭くて大変でしたが、無事成功しました。思ってた以上に長丁場でしたが、いい勉強にもなりましたよ」

 一方、あの男の方はというと、『脳外の貴公子』なんて呼ばれてもてはやされてる自覚故にクールぶってでもいるのか、いつもは素っ気ないというか、他人には関心のないようなポーカーフェイスを決め込んでいるのだが。

 この前の様子からして、結構チャラかったし、相当遊んでるに違いない。

 それ以前に、私相手だと、下にでも見られているのか、口だって態度だってメチャクチャ悪いし。

 けどさすがに院長の前だと、口調も態度もまともというか、爽やかな好青年を装っているようだ。

 ーーフンッ!

 どうぞいつまでも好青年の皮を被って、オペの話に花を咲かせてくださいな。

 凡人の私は帰ります。さようならーー。

 いつしか正面で向かい合ってオペ談義を始めた二人からそうっと背を向けて、更衣室へと足を一歩踏み出しかけた時のこと。

「あっ、そういえば、お父さん元気にされてる?」

 おじさんが急に思いついたようにそんなことを言いだして。

「はい。まだまだ現役でメス握ってますよ」

 窪塚の口ぶりからも、どうやら窪塚の父親も外科医らしいことが窺える。

 そのまま帰っていればよかったものを、好奇心に勝てなかった私は二人に向けて、思ったまんまのことを口にしてしまうのだった。

「窪塚のお父さんって、もしかして外科医?」
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