堂くん、言わないで。
堂とみくると歓楽街







「みくる」


なんど夜を越えても、あの日のことは簡単に忘れられなくて。

忘れるどころかひとりのときにずっと考えてしまう。


好きだから。

わたしが好きだから一緒にいる。


棗くんはそう言った。


さすがにその“好き”が友だちとしてじゃないことくらい、わたしにもわかる。



つまり……棗くんは、わたしのことを




「おい」


ぐにぃぃ、と伸びるほっぺた。

みんなして人のほっぺを餅みたいに!



「にゃに……」

「こっち見ろよ」

「ええ……?じぶんかっひぇ……」


わたしは戸惑いながらも読んでいた本を閉じた。


今日はそこまで寒くもなく、カイロとしての役目もない。

お互いに向かい合ったいすに座って、堂くんは眠り、わたしは本を読んでいた。


なのに寝ていたはずの堂くんは起きてるし。

わたしは本の内容がぜんぜん頭に入ってこないし。


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