堂くん、言わないで。


「はにゃひて……」


それにこうして同じことをされてるとどうしても思い出してしまう。

フラッシュバックのように再生されるシーン。

じわじわと込みあがってくる熱と胸のドキドキ。



「……なんで顔赤いわけ」

「ど、堂くんが引っぱるからでしょ?」

「そーじゃなくて」


離されたわたしはほおを押さえて熱を冷ます。

こうでもしないと籠もった熱を分散できなかった。



「こっち見ろって」

「んぅ、ちょ…乱暴っ」


ぐりんと顔をむりやり合わせられる。

頭をつかむのもどうかと思うんですけど!



「あいつになにされた?」

「……はっ?」

「柏木棗になにされた、って聞いてんの」

「え、なんで」


なんでわかったの、ともう少しで言いそうになる。

すんでのところで口をつぐんだ。


だけど堂くんはもっと顔をしかめる。

証拠はあがってんだ、と言わんばかりに視線をそそがれた。


顔の赤さ。

そしてわたしの反応がなによりの証拠らしい。



刑事に尋問される犯人の気持ちがわかったような気がした。


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