堂くん、言わないで。
どーせってなに。
こういうことってなに。
棗くんに触れられたとき、堂くんに触れられたとき。
わたしにとっては、
「っぜんぜん、ちがうもん……!」
堂くんのばか。
わたしの気持ちも知らないで、いつも勝手なことばっかりする。
まって、わたしの気持ちってなに?
わたしはどういう気持ちでいるんだっけ。
それすらもわからない。
とにかく堂くんといたら心臓がもたないし、いくつあっても足りなかった。
それに、どうせはそっちでしょ。
わたしの体温しか求めてないくせに、なんであんなことするの。
からかわれているようで、面白がられているようで。
悲しくて悔しくて、でもそれ以上に胸がどくどく暴れていて。
もぉー!と頭を抱えながら廊下を走り抜ける。
「…………はぁ」
だから。
図書室に置いてきた堂くんが、片手で顔をおおっていたことなんて。その耳が、すこし赤く染まっていたことなんて────
わたしは知るよしもなかった。