堂くん、言わないで。
そうして棗くんと別れたあと、目的の店でお目当てのものを買い。
お店を出たときには日がすこし傾きかけていた。
棗くんにいま終わったよ、と連絡をいれる。
すこしして、こっちはもうすこしかかりそう、と返ってきた。
それなら最初に待ち合わせていたところまで先に戻っておこう。
そう伝えるとおっけー、と餃子が言っているスタンプが送られてくる。センスが謎だ。
さて、戻ろうかな。
両手にのしかかる荷物は、それでも少ないほうだった。
わたしの分の荷物まで棗くんが余分に持ってくれていたから。
別れるとき、すこしもらったらよかったな……
あの大荷物のせいで時間がかかっているのだと思うといまさら申し訳なくなる。
「……あれ?」
そんなことを考えながら、歩いていたときだった。
ぼうっとしながら歩いていたせいか、まったく知らない場所に迷いこんでいた。
あせって空を見あげる。
特徴のない雑居ビルたちがわたしを見おろすだけで、なんの手掛かりも掴めない。
……ここ、どこ?
ひやりと心臓が縮こまる。
住み慣れたはずの街で迷子になってしまった。