堂くん、言わないで。


あわてて荷物を地面に置き、スマホの地図アプリを起動させる。


どうやらここは歓楽街のなかのようで、現在地を示すマークはその周辺を行ったり来たり。


電波が悪いのかなかなか現在地がわからず、もどかしさに何度もタップしていたときだった。


ぷつん、と急に真っ暗になった画面。

そこには間抜け面がうつっているだけ。



……充電切れだ。


なんでこんなときに?

というかそんなに使ってないのに。


バッテリーの減りがたまに異常に速くなるの、勘弁してほしい。

学校じゃないからモバイルバッテリーも持ってきてないし。



ともあれ本格的に、帰り道がわからなくなった。


なんだか入り組んでいる路地裏のようなとこ。


ヘタに動けばもっと人けのないところに行ってしまいそうで。



どうしよう、と途方に暮れていたときだった。



「あ、」


視界の端にうつりこんだ人影。

こちらに背を向けて歩くその人を、わたしは考えもなしに追いかける。


どんどん、奥へ奥へと進んでいく影。




「ま、まって……っ!」


声が聞こえないのか、どれだけ呼んでも振りかえってくれない。


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