堂くん、言わないで。


わたしは握手に応じながら頭のなかを整理する。


ただでさえキャパオーバー気味なのに、堂くんに弟がいた……?


でも弟がいたって不思議じゃない。

わたしだって家族構成を堂くんに話したことはなかったから。


だけどやっぱり驚いたものは驚いた。



まじまじ見つめすぎていたのか、遼花くんがふっと目をほそめる。



「見すぎぃ。俺のこと好きになった?」

「す、……ええと、あんまり似てないなって」

「よく言われる。でも血は繋がってるよ」


その口調になんだか含みを感じた。

さっき表情がなくなったときのように、その言葉からも温度が消えたみたいで。



「ごめんなさい。そういうつもりじゃなくて」


機嫌を損ねてしまったかと思い、あわてて謝る。

でも、気にしなくていい、と遼花くんは笑ってくれた。


そのときやっと離された手はあたたかくも、冷たくもなかった。



「堂くんの冷え性って遺伝なんですか?」

「その堂くんは兄貴のこと?ちがうよ。家族に冷え性はひとりもいない」


兄貴を除いて、と遼花くんは付け足した。



そうなんだ……


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