堂くん、言わないで。
エピローグ




わたしは堂くんがどんな家庭で育ってきたのか知らない。

なんで冷え性なのかも、なず菜さんとの間でなにがあったのかも知らない。



だけどわたしは堂くんが意外にも嫉妬深いことを知っている。

人に興味がないようで、じつはそういうわけじゃないことも知っている。

闇の王子とか図書室の宗教画って、ちょっと恥ずかしいあだ名で呼ばれてることも知っている。


困っている人がいたら手を差し伸べてあげられる優しさがあることも、わたしは知っている。



それだけでいいと思った。

わたしは充分、堂くんのことを知っている。




……それに。




自分の気持ちを伝えること。

大切な人に、心から好きだと言えること。




特別な言葉なんていらない。


ありきたりな言葉でも、大切な人からもらえたら。



それは────なによりも特別な言葉になる。









『堂くん、言わないで。』end.





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