堂くん、言わないで。
すると柏木くんは、ぱっと。
いきなり、いつもの笑顔に戻った。
「や、かわいーなって思って?」
「かわいいって……」
それはどういう意味で?と聞くよりも先に。
柏木くんがわたしの髪にさらりと触れる。
長い指がほおに触れて、そのまま自然な流れでするりと撫でられる。
「熱いね、カオ」
妖艶に笑うその表情にどきりとしてしまったのは、きっと条件反射だ。
固まるわたしはそのまま彼を見つめる。
「なーんか…ぐっときたかも」
顔に触れている指がするすると下に降りていって。
すうっと細められた瞳に、さっきまでの人懐っこさとは違う、得体の知れない色香を感じた。
そのまま唇に指が触れそうになったとき────
「おい」
「っ……!?」
どことなく不機嫌を感じさせる低い声が聞こえて。
後ろからぐいっと腕を引かれる。
そのまま、わたしはその人物にもたれかかるような形になってしまった。