堂くん、言わないで。
「堂くん……」
そこにいたのは無表情ながらも、かすかに眉にしわを寄せた堂くんで。
ちらりとわたしを見おろしたあと、柏木くんに剣呑な視線を送る。
「なにこいつ泣かせてんの」
「泣かせる気はなかったんだけどね」
すこしは慣れたと思っていたわたしでも、怖いと思ってしまう堂くんの放つオーラ。
だけど柏木くんはちいさく肩をすくめただけだった。
むしろわたしたちに興味を示すように視線を向けてくる。
「てかふたり、なんか親しそうだけど。どういう関係なのかなー?」
柏木くんの問いかけを無視した堂くんはわたしの手をひいた。
「行くぞ。安藤みくる」
「え、あ、堂くんっ……」
止まるつもりはないらしい。
わたしはあわてて後ろを振りかえる。
てっきり怒っているかと思ったのに、柏木くんは笑顔でばいばいをしていた。
「またあとでね、みくるちゃん」
その瞬間、ぎゅっと。
握られている手に力がこもったような気がした。