堂くん、言わないで。
まるで探偵のように、電柱の後ろに隠れながらついていく。
どうしよう。
声をかけるタイミングをわたしはつかめずにいた。
このまま尾行をつづけるのも気が引ける。
だからといって「堂くん!」と笑顔で話しかけることができずにいたのは、まだあのときのキスのことが振り切れていなかったから。
そのうち堂くんはぴたりと足を止めた。
わたしはもうすこしであっと声をあげそうになった。
すれ違いかけた通行人の肩を、堂くんがつかんで止めたから。
男の人だ。
堂くんと同じくらい背が高い。
ほぼ白に近い金に染め抜いた髪が、夕焼けを浴びてきらきらと光っている。
横顔しか見えないし遠目だったけど、その人の顔立ちはとても整っていた。