堂くん、言わないで。
死んだ……?
だれが死んだの?
それとも殺した、ってこと?
……いや。
それは違うと思う、さすがに。
ケンカというか、言い合いというか。
たしかに堂くんが一方的に話してるだけだった。
相手の男の人は面倒くさそうにうなずいている。
仲裁に入る勇気はなかった。
すこし離れた物陰からじっと身をひそめ、見守るしかできない。
堂くんの顔は見たこともないくらい険しくて、なんだかすごく怖かった。
そのうち相手が堂くんを振り切って、歓楽街へと消えていく。
堂くんはそれを追いかけることはせずに、その後ろ姿をじっと見つめていた。
「っ、はぁ……」
一連の流れを、わたしは息をとめて見入っていたらしく。
すこし荒くなった呼吸を落ち着けるように、何度か深呼吸をする。
物陰に顔を引っこめ、縮こまった瞬間。
はっとした。