堂くん、言わないで。
最後までちゃんと盗み聞き……いや、盗み見をしてしまった。
立派な犯罪行為だ。
訴えられたら負けるやつだ。
もし堂くんに見つかりでもしたら、
と思ったときだった。
「……なにしてんの」
「ひゃっ……ぁ」
頭上から平坦な声がかけられた。
おそるおそる視線をあげる。
物陰にうずくまるわたしを見おろしていたのは、
「ど、堂くん……」
わたしの横に置いてある買い物袋をちらりと見て、すぐに顔へと視線を戻される。
無言の圧力に耐えかねてわたしは口をひらいた。
「あ、おっ、おつかいしてたんだけどね?急に気分が悪くなっちゃって……休憩してたの」
「こんなとこで?」
こんな中途半端な道ばたで?
と言いたげな顔をされる。
わたしはごまかすように曖昧に笑った。
不審げにじっと顔を見つめられて、その視線に思わずさっと目を逸らす。
慣れてない。
目を見つめられるのはあまり得意じゃなかった。