愛され、囲われ、堕ちていく
朝食を食べていると、インターフォンが鳴った。
「あ、敬太さん来たかな?」
「あーもうそんな時間?」
伊織は既に食べ終わっていて、煙草を吸いながらまだ食べている凪沙にちょっかいをかけていた。

「おはよ、伊織、凪沙」
「はよー」
「おはよう、敬太さん」
「行くよ、伊織」
「待って、もう一回凪にキスしてから……」
そう言って、凪沙の口唇を奪い貪って、
「あ、今度は玉子の味だ」
と言った。
「/////」

その姿を見ても特に何の反応もしない、敬太。
敬太は伊織の幼なじみの親友で暴走族時代から、伊織の右腕として働いている。
慣れもあるが、ここで反応すると伊織の怒りを買うのだ。
“俺の凪に興味を持つな”と。

伊織は家業を継ぐ為、今は若頭として組の仕事をしている。
詳しくは、フロント企業である不動産会社の経営だ。
(まぁ経営は社員に全て任せているので、伊織は基本的に自由に暮らしている)

「じゃあ…行ってくるね!凪。
なるべく早く帰るから、待っててね!
帰ってから、一緒に買い物行こうね!」
と言って、今度は頬に軽くキスをして出ていった。
「行ってらっしゃい」

伊織が出ていった後、凪沙は家事を行う。
片付けや掃除、洗濯。
タワマンの最上階に住んでいて、家の中では自由だが、それ以外は伊織の許可がないとできない。

買い物等の外出は、伊織がいないとできないのだ。
それでも凪沙は、伊織から放れられない。

裕隆を亡くしてから、伊織が必死に癒し支えてくれたから、ここまで生きてこられた。
こんな束縛を受けていても、凪沙も伊織が好きだ。
それに、逃げたところですぐ見つかるのだ。
きっとどこに行っても生活できないだろう。

伊織を怒らせてまで、凪沙を助ける人間はこの世にいないから。

そう。
伊織を怒らせてはいけない━━━━━━
< 3 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop