愛され、囲われ、堕ちていく
「は?」
「伊織は、ちゃんと愛してくれてます。ちょっと不器用なだけです」
「へぇー、そうか…」
「凪…」
「へ?」
「ありがと」
「え?」
「嬉しい!凪がそう言ってくれたこと」
「うん」
微笑み合う、二人。

「ほぅ…あの伊織がこんな表情……」

そしてその後も、凪沙はただ伊織の傍について他人事のように伊織の仕事を見ていた。

「お、伊織坊っちゃん!」
「……紫朗かよ…」
「どなた?」
「白井 紫朗。じじぃの息子」
「初めまして。凪沙です」
「/////
坊っちゃんの嫁?」
「だったら?」
何かを察した伊織が、凪沙を背中に隠した。

「ちょっと伊織、退けよ!」
「やだよ、もう用は済んだだろ?向こう行けよ!」
「伊織らしくない嫁さんだな」
「は?」
「悪魔じゃん!伊織。
でも嫁さんはどう見ても、天使みたいな感じだし……」
「…るせーよ。
凪、行くよ!」
「う、うん。
じゃあ…白井さん、失礼しました」

「聖道様、組長に伝えていただきたいことがありまして……」
伊織が従業員に呼ばれ、少しの時間席を外す。
「じゃあ伊織、私はお手洗い行ってくる」
凪沙も一度会場を出た。

用を済ませてトイレを出ると、紫朗がトイレ前にいた。
「凪沙さん、伊織が呼んでるよ」
「え?あ、はい」
さりげなく、腰を支えられ誘導された。
「え?こっちって客室の方ですよね?ほんとに伊織がいるんですか?」
「………」
「ちょっ…離して下さい!」
客室の中に押し込まれた。

「なんで、伊織みたいな悪魔と結婚したの?」
そして両手で壁に閉じ込められ、囁かれた。
< 43 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop