愛され、囲われ、堕ちていく
「え……?」
「アイツ、悪魔だろ?
いつも相手をなぶり殺す。
どんなに懇願しても、相手を許さない。
冷酷で、残忍。
そんな奴を、なんで旦那に選んだの?
あんた、どうみても“普通”の女だろ?」
「言いたくありません」
「あ?」
「言いたくない…私がどんな思いで、伊織の傍にいるかを決心したかなんて……」
「ふーん。
俺にはわかんねぇ…あんな血も涙もない人間」
「もう…離して下さい!」
「………」
紫朗は無言で、凪沙の頬や口唇に触れた。

「あの伊織が夢中になる女か……
何がいいんだ?
身体の相性とか?」
「は?
触らないで…下さ……」
紫朗の手が、凪沙のドレスのスカートの裾にかかる。

━━━━━━!!

その頃の伊織。
「おい!!じじぃ!!!」
「あ?なんだ、伊━━━━━」
ガン━━━━━!
バリーーーン!!!!
伊織が白井の後頭部を持ち、そのままテーブルの上に押さえつけた。
グラスや皿が下に落ちて割れる。

「組長!!?」
その瞬間、伊織も白井の部下達に拳銃を突きつけられる。
それでも伊織は、びくともしない。
それどころか、白井に対して尚も凄む。
「凪を返せ……」
「あ?なんだ……嬢ちゃんがどうした?」
「いねぇんだよ…!紫朗もいねぇ……お前等がなんかやったとしか思えねぇ……」
「知らねぇよ、俺は……」
「だったら、探せや!!」
「その前に離せ…じじぃにこの体勢は酷だろ?」
「チッ…!」
舌打ちした伊織が、しかたなく離した。

「早く…凪を返せ……」
「お前…黒江以上だな……」
「あ?」
「いや、たぶん部屋だな」
「は━━━━?」

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