愛され、囲われ、堕ちていく
「やりすぎだ、伊織。
始末、大変じゃん!」
「あー楽しかったぁ!」
伊織は、なぶり殺した後とは思えない程清々しい顔をしていた。

そして伊織は今、実家の門の前にいる。
紅音に連絡すると、実家にいると言われた為だ。
門を開けると黒江の部下達が、ズラッと並んでいて、
「若!お疲れ様ですっ!」
「………」
「伊織?」
「なんか…鬱陶しい…」
部下達を指差して、伊織が言う。
「なんか王様みたいで楽しくね?」
敬太が言う。
「王様って……」

中に入り、居間に向かうと黒江と紅音、紅音の旦那で伊織の暴走族時代からの仲間でもある義理の兄・臣平がいた。
「おぉ、伊織じゃん!」
「お邪魔」
「あれ?凪沙は?」
「は?連れてくるわけねぇじゃん!」
「なによ、せっかくお茶しようと思ったのに…
で?何?」
「同窓会、紅音は行くの?」
「あー中学のね!凪沙と行こうと思ってるけど、なんで?」
「それ、断っておいてよ!
凪が俺を置いて同窓会行くとかあり得ねぇし……」
「は?いいじゃん!同窓会位……」
「ダメ!!凪は俺の!!」

「伊織」
「あ?なんだよ!じじぃ!」
「たまには、凪沙くんを自由にしてやれ」
「やだよ!紅音…勝手に連れてったら、いくらお前でも殺るよ!しかも会場ごと、めちゃくちゃにしてやるから」
そう言って、出ていった伊織だった。

「凪ちゃん、かわいそうだな」
伊織が出ていった後のドアを見て、臣平が言った。
「そうね……
おとなしくしてたら、これ以上ない位いい男なのにね…伊織って…」

「アイツは愛情に飢えてるからな……
誰にもアイツは止められない」
黒江の小さな呟きが、部屋に響いた。
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