不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「仕事……どうしよう」
ぽつりと呟いたと同時に、隣に灯がゆっくりと腰を下ろす。
私はココアをひと口飲んだあと、目の前のテーブルの上にカップを置いた。
「仕方ないだろう。仕事より何より今は、牡丹とお腹の子が最優先だ」
「でも……それじゃあ、また悪阻のときみたいに周りに迷惑をかけることになっちゃう」
「そうだとしても、命より大事なものなんてないだろ。ここで無理をして仕事を続けた結果、牡丹とお腹の子に何かあったらどうするつもりだ」
灯が久しぶりに強い口調で断言した。
だけど私はその一言で、それまで必死に張り詰めていた糸みたいなものがプツンと切れ、冷静さを保てなくなってしまった。
「……灯はどうせ、私が仕事を休んだり辞めたりしたところで、フジロイヤルには何の支障もないって思ってるんでしょう?」
自分でもハッキリとわかるくらいに剣のある言い方になった。
でも、言い返さずにはいられなかったんだ。だって今の灯は、私がどんな意向を示したところで受け入れるつもりはないと決めているみたいだったから。
「別に、そういうことは言ってないだろ? 俺は当たり前の優先事項の話をしてるだけだ」
「当たり前の優先事項って、そんなの私だってわかってるよ! お腹の子の命が一番大事、当然でしょ?」
「だったら、答えはひとつしかないだろう」
「でも、私にとっては仕事だって大切なことなの。結婚したからとか、子供ができたからとか、子育てが大変だからって理由で、好きな仕事を諦めたり、簡単に辞めたりしたくない……っ」
興奮して叫んだせいで息が切れた。
これ以上は前向きな話ができる気がしなくてソファから立ち上がろうとしたら、灯に腕を掴まれて逃げ出すことは許されなかった。