不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「だから、藤嶋と診察室で再会したとき本当に驚いたよ。で、牡丹ちゃんが藤嶋と同じ苗字になってたことを知って、自分のことのように嬉しかった」
春風みたいに優しい声。
ああ、灯にはこんなに素敵な友達がいたんだ。その事実を知れたことが、今は何よりも嬉しかった。
私が高校生のときに森先輩に憧れていたのは本当だし、先輩の彼女という立場に夢を見ていたのも事実だ。
だからこそ、親が勝手に決めた灯との結婚のせいで、森先輩のことを諦めなきゃいけないことが悔しくてたまらなかった。
婚約を破棄するつもりはないと断言した灯にも腹が立って、灯自身にも苦手意識を抱いていた。
だけど……どうしてか今は、不思議と胸が温かい。
それは現在の私が灯のおかげでとても幸せで、夫である彼のことをかけがえのない大切な人だと自覚しているからなんだろう。
「って、長話になっちゃったけど、今の全部、俺が話したってこと、藤嶋には内緒にしておいてもらえるかな?」
「ふふっ、わかりました。私の胸にしまっておきます」
「ありがとう。牡丹ちゃんとお腹の子のことに関しては、またあとで藤嶋が来たときに改めて説明するけど……。俺は産婦人科医としても藤嶋の友人としても、ふたりのこと、絶対に助けたいと思ってるから」
頼もしい言葉に、私は満面の笑みを浮かべて「よろしくお願いします」と答えながら頷いた。
そうしてそのあと森先輩が部屋を出ていき、三時間が経った頃、入院のための荷物を持った灯がやってきた。