不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 


「赤ちゃん出ましたー!」

「時間は?」

「十三時ちょうどです!」


 志村先生、森先輩、そして看護師さんの声が聞こえて、まず第一にホッとした。

 だけど、すぐに不安の波が押し寄せてくる。

 あれ……? なんでだろう。赤ちゃんの泣き声が聞こえない。

 出産あるある映像では、赤ちゃんがお腹から出てきた瞬間、「おぎゃー!」という元気な産声が聞こえてくるというのが定番なのに。


「藤嶋さん、赤ちゃん無事に産まれましたよー」

「じゃあ、これから藤嶋さんの処置に入りますからね」


 でも、執刀医のふたりは特にそのことに触れる気配はなかった。


「あ、あの……」

「どうしました?」


 いつの間にかカラカラに乾いていた喉を震わせ、私はそばに立っていた麻酔科の医師に声をかけた。


「赤ちゃん……泣き声が……」


 聞こえないけど大丈夫ですか?と、聞くより先に、少し離れた場所から赤ちゃんの「ホギャア」という小さな泣き声が聞こえた。


「藤嶋さん、赤ちゃん元気ですよ。可愛い女の子です」


 十数秒の間を空けて、顔のすぐ横に小さな赤ちゃんが運ばれてきた。

 自然と目には涙が浮かんで、雫が縦に流れ落ちる。

 
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