不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 


「よかったぁ……」


 お腹の子に会えたら第一に何を言おう。何を伝えようと、密かに考えていたのに、子供の顔を見て一番に出た言葉は安堵だった。


「赤ちゃん小さいから、先にNICUに行きますね」

「はい……ありがとうございます」


 でも、赤ちゃんの顔を見られたのは一瞬で、当然ながら抱っこなんてできるような状態ではなかった。

 多分だけど赤ちゃんは事前に説明されていたとおり、三十五週で産まれた早産児だから処置が必要で、保育器に入るんだろう。

 きっとこのまま手術室を出たら、たった今看護師さんが言っていたとおり、NICU――新生児集中治療室に運ばれていく。

 だけどその前に、手術室前で待っている灯に会えるはず。

 赤ちゃんが女の子だって知ったら、灯はどんな顔をするかな?

 想像したら幸せな気持ちになって、私はつい目をつむりそうになった。


「藤嶋さん、大丈夫ですかー? 聞こえてますか?」

「え……あ、は……はい」

「藤嶋さん、あと少し頑張りましょうね」


 一瞬意識が遠のきかけていたところに、志村先生と森先輩の頼もしい声が聞こえて我に返った。

 いけない……、最後まで、ちゃんと気を張っていなきゃ。

 私の手術が終わるのを待っている灯の様子を思い浮かべたら、また目には涙が滲んだ。

 ――そのあとのことは、正直に言うとよく覚えていない。

 大出血が危惧されていた出産だったけれど、幸いにも出血は八〇〇mlで済み、最後まで問題なくお腹は閉じられた。

 
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