不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「牡丹って、思ったよりも無責任なやつだったんだ。俺と夫婦になったんだから、自分の役割くらいは、ちゃんとわかってるのかと思った」
私の役割──?
「俺とこういうことをしたくないってことは、つまり、妻としての役割を放棄するってことでいい?」
コテンと首を傾げた灯は、戸惑う私を嘲るように口端を上げた。
目元にかかった黒髪がやけに妖艶だ。挑発的な物言いと表情に、またじわじわとお腹の奥から怒りが込み上げてきた。
……灯は、私の覚悟を試しているんだ。
家族や父が経営していた会社の従業員たちを守るために政略的な結婚をしたのに、今さら逃げ出すつもりなのかと問いかけている。
なんて、酷い人だろう。そもそも最初から、この結婚に関して私に与えられた選択肢はひとつで、逃げ道も与えられなかったのに。
「……最低。灯なんて、大っ嫌い」
十数年前に公園で吐き捨てたのと同じ言葉を口にすれば、灯はフッと小さく笑った。
「懐かしいな、それ。まぁでも、牡丹の言うとおりだけど」
あの頃よりも大きくなった手が私の頬を優しく撫でる。
悔しさで思わず下唇を噛み締めて目を逸らせば、何故か灯は切なげに眉尻を下げた。
「そんなに強く噛んだら傷付くぞ」
「これから私を傷付ける人には言われたくない」
キッパリと言い返せば、今度は困ったように灯が笑った。
「それはそうだな。でも、少しでも牡丹が傷付かないように……善処する」
「あ……っ」
その言葉を合図に、灯の指が私が着ていたシャツのボタンを外した。
反射的に抵抗しようとしたけれど、すぐに我にかえって結局成されるがままに身を委ねた。