不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
『ともりくん、いっしょにあそぼ!』
腕の中で寝息を立てる愛しい彼女の柔らかな髪を撫でながら、俺は遠い日の記憶を思い出していた。
つい先日、俺の妻となった女性──牡丹とは物心つく前からの付き合いで、いわゆる幼馴染という間柄だった。
気がついたときには牡丹が当たり前にそばにいて、友達というより家族に近い感覚でいたことを覚えている。
雪のように白い肌も桜色の唇も、羽根のように長いまつ毛も、意地っ張りで曲がったことが大嫌いなところもあの頃から少しも変わらない。
いつも、どんなときでも俺のことを慕い、屈託のない笑顔を見せてくれる牡丹は俺の大切な子で、誰よりも特別な存在だった。
『灯、どうしたの?』
だけど、俺は最初から牡丹に対して恋愛感情を抱いていたわけじゃなかった。
牡丹をハッキリと異性として意識しだしたのは、俺が小学四年生の秋のことだ。
学校帰りに家の近くの公園で、ランドセルを広げていたときのこと。
取り出した体操服には絵の具がベッタリとついていて、母親に見られる前にどうにかしないとと焦っていた俺は、牡丹に声をかけられるまで人の気配に気づけなかった。