不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
『それ、なんでそんなに汚れてるの?』
牡丹が不思議そうに俺の手の中を見て尋ねた。
理由は簡単、俺の体操服には黒い絵の具で大きなバツが描かれていたためだ。
ヤバイと思って咄嗟に体操服を丸めて隠したけれど、牡丹にはランドセルの中でグチャグチャになっている教科書まで見られてしまった。
『これ……誰かにされたの?』
『牡丹には関係ないだろ! あっちいけよ!』
見られてしまったという恥ずかしさと悔しさで、俺は咄嗟に声を荒げて体操服とランドセルを背後に隠した。
当時の俺は同級生たちにくだらない嫌がらせを受けていて、このときも妬みと嫉みを抱いたやつらに体操服を汚され、ついでに教科書やノートを破かれた。
『でも、その体操服、灯ひとりで洗ってきれいになる?』
『水性の絵の具だし洗えば落ちるよ。あいつらだって、それを知っててこういうことしてきてるんだし』
イジメっ子たちは俺が親や先生にはチクらないとわかっていたんだろう。
実際、思春期なこともあり、自分が同級生たちから嫌がらせをされているなんて死んでも知られたくないと思っていたし、こんなことで両親に心配をかけるのも嫌だった。
『だから、俺の親には絶対言うなよ。別に、こんなのどうとも思ってないし』
精いっぱいの強がりだった。とにかくこんな情けないこと、誰にも知られたくなくて、必死に虚勢を張ったんだ。