不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 


「本当は、しっかり食べなきゃいけないとは思うんですけど……」

「いえいえ。初期の頃はあまり無理をせず、とにかく食べられるものを食べられるときにお腹に入れるだけで大丈夫ですよ」

「え? でも、赤ちゃんの栄養とかは大丈夫なんでしょうか?」


 先生の意外な答えに目を剥いた。

 私がご飯を食べられなかったら、赤ちゃんの成長にも影響がでるんじゃないの?

 だから、今日妊娠がハッキリとわかったら、気持ち悪くなっても無理にでも食べ物は口にしないとと思っていたんだけど……。


「この頃の赤ちゃんがお母さんから貰う栄養は、そこまでたくさんの量ではないので大丈夫です。もちろん、アルコールや喫煙は厳禁ですが。もしも悪阻が辛いようなら遠慮なくご連絡ください。こちらで点滴を打つこともできますからね」

「そうなんですね……。ありがとうございます」


 そのあと看護師さんから今後の説明と、悪阻については酷いと水分も取れなくなる場合があるから、くれぐれも無理をしないようにと伝えられ、私達は診察室を後にした。


「あ、お会計呼ばれたみたい」

「いい、俺が行ってくるから牡丹は座ってろ」


 さっと動いた灯は待合室でもソファには座らず、熱心に携帯電話で何かを調べていた。

 ……なんか、昨日の夜から別人になったみたい。

 さっきの悪阻について先生に聞いてくれたことといい、今の気遣いといい、結婚の話が出てからの灯の様子とは百八十度、違って見える。


「それじゃあ、行くか」


 そうして私達は病院を出ると、その足で役所に寄って母子手帳を貰った。

 幸い今日は体調もそこまで酷くはなかったので、できることはできるうちにしておきたいという私の提案に、灯が頷いてくれたのだ。

 
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