不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
『しかし牡丹さんがご懐妊されてからは、牡丹さんとの時間を大切にしたいと思うようになられたのではないか……と、私はそばで見ていて思います』
灯の秘書の園宮さんは、灯よりも三つ年上の物腰柔らかな男の人だ。
一番近くで彼の仕事ぶりや行動を見ている園宮さんがそう言うのであれば、あながち間違っているとも言い切れず、このときの私は赤面するしかなかった。
まさか、灯がそんなふうに思ってくれているとは、にわかに信じられないけれど……。
でも、もし園宮さんの予想通りなら嬉しい、なんて思っている自分もいて、なんだかとてもくすぐったかった。
「平日のこの時間に、牡丹とカフェに来るのなんて初めてだな」
コーヒーに口をつけたあと、そう言った灯の声は心なしか楽しそうにも聞こえた。
まぁ、灯は一年中、仕事仕事で忙しそうだもんね。
園宮さんからの話の中で一番驚いたのは、帰宅時間は早まったのに灯の仕事量は以前と然程変わらないということだ。
灯は私の身体のことばかり気にかけてくれるけど、私も灯が無理をしていないか、少し前から気になっていた。
「また……お互いの時間が合ったときに来ようよ」
「うん?」
「こういうふうに、ゆっくりする時間も大切だと思うし……。ほ、ほら、灯ってばいつも仕事ばっかりで忙しそうだし! 何より、灯にも自分の身体を大事にしてほしいっていうか……。この子が産まれてきたときにパパの元気がなかったら、やっぱりつらいし」
灯のことを、初めてお腹の子の『パパ』だと表現した。
な、なんか、今更だけど恥ずかしい。
だけど私の言葉を聞いた灯は一瞬だけ狐につままれたような顔をしたあと、テーブルの上に頬杖をついたまま、肩の力が抜けたような無邪気で優しい笑みを浮かべた。