不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
「俺が妊娠を喜んだのは、牡丹との間にこの子が来てくれたことが、最高に嬉しかったからだ。それ以上でも、それ以下でもない。藤嶋家の跡取りがどうだとか、そんなの一度も考えたこともなかった」
断言した灯は決して嘘をついているようには見えなかった。
「それに前にも言っただろ? 牡丹とお腹にいる子を守るためなら、なんだってすると誓うって」
それは妊娠したことを灯に告げたときに、灯に言われた言葉だ。
あのときは灯がそう言って背中を撫でてくれたから、大きな安心感を覚えたんだ。
そう考えると今日までの日々で灯に言われた言葉や、行動にも納得がいく気がした。
灯は最初から私のことが好きで、いつも私を大切に想ってくれていた。
私と結婚したのも私を好きでいてくれたからこそだけど……そのぶん灯は、私の気持ちが自分にないことに苦しんでいたに違いない。
「灯……ごめんね」
自然と口をついてでた謝罪に、灯は何故か訝しげな顔をして眉根を寄せた。
「それ、何に対して謝ってるんだ。まさか俺が何を言おうとも結婚生活は続けられないって意味の謝罪じゃないよな? 言っとくけど、俺はここまで来たら何があっても牡丹を手離すつもりはないから。俺が絶対に、牡丹もお腹の子も幸せにするって決めてるし」
そう言うと灯は、私の手を掴む手に力を込めた。
いつもは余裕たっぷりなくせに、小さな子供が必死に抵抗するみたいな言い方に胸がキュンと鳴ってしまう。