今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
「ただいま」
自宅の玄関を開けると、一番に靴を脱いで自分の部屋に向かおうとした。
あれから家に着くまで3人とも黙っていて気まずい雰囲気だったから、一刻も早く解放されたかった。
だけど、リビングから母が血相を変えて走ってきたので立ち止まった。
手には家の電話の子機を持っているみたい。
「翔、何処に行ってたの?さっき愛華さんから何度もお電話があったのよ」
「え、ああそうか……」
翔くんは困ったように眉を寄せる。
「そうかじゃないわよ、彼女泣いてたみたいよ。なにかあったの?」
「いやなにも」
彼は素っ気なく答えるけど、母はしつこく問いただした。
「なにもって、そんなわけないでしょ。あんなに泣いてて。あちらの方でも矢代さんが大変そうだったわ」
私は翔くんと顔を見合わせた。
どうやら、伊集院家の方でちょっとした騒ぎになっているみたいだった。