今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
たぶん、母はなにかしら感じとったかもしれない。


うすうすわかっていて知らないふりをしているような気がした。


動揺しつつも、とにかくこの場を収めようとしてくれているように見えた。


父は無言でリビングの方へ歩いて行ったのだけど、敢えてそれ以上は聞こうとはしなかった。


その背中は小さく丸まっていて寂しそうにも見えた。


みんながみんなそれぞれの気持ちを隠している。


わざと気づかないふり、見ないふりをしてる。


どうすればいいのか戸惑っているのかもしれない。


それとも知らないフリをすることで衝突を避けたのかな。


こんなの、本当は嫌。


すごく違和感を覚えた。


こんなんじゃ家族がバラバラになってしまうよ。


それでも、私には本当のことを言う勇気なんか湧いてこなかった。


バラバラの気持ちのままでも、言いたいことを何も言わなくても、このままでいたかった。
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