あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。

さっきから何度も『ダメ』『やめて』と言っているのに、彼は一向に止まる気配がない。
それどころか、彼の手のひらがふくらみを包みこみ、やわやわと揉みはじめた。

「やぁっ、」

大きな手からはみ出すくらいの感触を楽しむようにじっくりと捏ねる。
そうしながら首の後ろをきつく吸われて、痛いはずなのに甘く痺れて腰から下がズクンと疼いた。

「静さん―――」

低く甘く注ぎ込まれる中低音が、わたしを追い詰める。


なんて意地悪なのだろう、この御曹司は。

涙でぼやけた窓を睨みつけるけれど、わたしの首筋に埋める彼の顔は見えない。

わたしが誰を好きかなのか、彼は分かっているのだ。それなのにそれをわたしの口から言わせようとするなんて―――。

悔しさと恥ずかしさで、顔が燃えるように熱い。ガラスの向こうのネオンがどんどんぼやけていく。

わたしに告白させて、彼はどうするつもりなのだろう。

『好きになられても困る』
『そんなつもりじゃなかった』

とでも言うのだろうか。

もしかしたら『一夜の思い出くらいなら作ってあげる』とでも?

そんなものは要らない。
どうせフラれるなら、潔くフラれてやる。

年上なめんな―――!

わたしはグッと奥歯を噛みしめ、口を開いた。

「アキが好きっ…!」

ハッキリと大きな声でそう言ったら、アキの動きがピタリと止まった。


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