あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
視界いっぱいに広がる綺麗な顔。
「ア、キんっ…!」
無意識にこぼれた彼の名前は、彼の咥内に吸い込まれた。
「んっ、んん~~っ!」
反射的に顔を背けようとするけれど、先回りしていた大きな手にそれを阻まれる。頭の横側に添えられた手のせいで、びくともしない。
それどころか―――。
「ぁんっ、」
淡く開いた唇の間を舌先でねっとりと舐められて声が上がる。その一瞬の隙を見逃さず、それはわたしの中にぬるりと入ってきた。
「ふぁっ、ん~~~っ、」
身構える間もなく絡め取られた舌を、擦り合わされる。
それだけでぞくぞくとした甘い痺れが這い上がってきて、下腹部がジンと熱くなるのを感じた。無意識に太ももに力が入る。
次の瞬間、わたしは自分が何も身に着けていないことに気付いた。
そうだった…!ゆうべわたし、彼と―――。
「ア、……んっ」
わたしが思い出したことを察知したのか、侵略者は容赦なくわたしの咥内を蹂躙し始めた。
歯列、頬の内側、口蓋、舌の付け根―――あらゆるところを丹念になぞられるたび、わたしはくぐもった声をあげるばかり。逃げようにも上半身は彼に圧し掛かられているせいで、身動きが取れない。
押し返そうにも布団に包まれていて、文字通り手も足も出ないのだ。
薄い羽根布団越しに押しつけられた胸板の硬い感触に、昨夜バスルームで目の当たりにした彼の姿が脳裏に浮かんだ。
スーツを着ている時は細身に見えるのに、思っていたより全然逞しくて―――。
その背中に腕を回して必死にしがみ付いた時のことを思い出して、カッと頬が熱くなってしまう。
足は自由が利くからジタバタと動かすことくらい出来るはずだけど、そんなことをするなんて土台無理な話。
昨夜の余韻のせいなのか、既に内側が蕩け始めていて、固く閉じた太ももを動かすことなんて出来やしないのだ。