あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
Chapter14*オオカミなんて怖くない!ドラトラだってどんと来い!(※個人の見解です)
[1]
目の前の扉をノックする。
どれくらいの広さの部屋か分からないけれど、離れていても届くよう、大きく二回。
一拍置いてのち、中から「はい」と言う声。
ドア越しでくぐもっていても分かる。間違いない、アキの声だ。
久方ぶりに聞く艶やかな中低音に、胸の奥から熱いものが込み上げた。だけど今はそれに浸っている場合じゃない。
わたしは意を決して重厚な扉を開いた。
小さく開けたドアから内側へ滑り込んだ瞬間、ドクンと全身の血管が波打った。
アキだ―――。
目の中に飛び込んで来た彼の姿に、胸がきつく締め付けられ、まぶたは熱を持ち始める。
ドアから離れたところにある大きなデスク。上着を羽織らずジレ姿の彼は、そこに座って、デスクに広げたノートパソコンから目を離さない。
キーボードを叩いている最中の彼は、こちらには一瞥もくれず口を開いた。
「ナギさん、用って何ですか。僕はこれから一刻も早く行きたいところがあって、すぐにでもここを出たいんです。出来たら用件は手短におねが、」
「お忙しいところ申し訳ありませんっ、一分だけで良いので話を聞いてください!」
わたしが張り上げた声に、彼はピタリと動きを止めた。
彼が顔を上げるのがコマ送りのように見える。
目が合った途端、彼が大きく目を見開きながら息を呑むのが分かった。
『まさかこんなところまで追いかけてくるなんて―――』
そう顔に書いてある。
『こんなところまで何をしに?』
『今さら何の用?』
『迷惑だ』
そう言われたらどうしよう。ここに来るまで何度もそう考えた。
だけど怖がってばかりじゃ前に進めない。たとえそう言われたとしても、わたしには彼に言わきゃいけないことがある。
胸を突き破りそうなほど暴れている心臓を、落ち着かせている暇はない。とにかく彼に拒否される前に言わなくちゃ。
「アキから逃げ出したわたしが言うなんておかしいかもしれないけど……でもわたしの話を聞いて欲しいの」
わたしがそう言うと、彼が眉間に力を入れた。
目の前の扉をノックする。
どれくらいの広さの部屋か分からないけれど、離れていても届くよう、大きく二回。
一拍置いてのち、中から「はい」と言う声。
ドア越しでくぐもっていても分かる。間違いない、アキの声だ。
久方ぶりに聞く艶やかな中低音に、胸の奥から熱いものが込み上げた。だけど今はそれに浸っている場合じゃない。
わたしは意を決して重厚な扉を開いた。
小さく開けたドアから内側へ滑り込んだ瞬間、ドクンと全身の血管が波打った。
アキだ―――。
目の中に飛び込んで来た彼の姿に、胸がきつく締め付けられ、まぶたは熱を持ち始める。
ドアから離れたところにある大きなデスク。上着を羽織らずジレ姿の彼は、そこに座って、デスクに広げたノートパソコンから目を離さない。
キーボードを叩いている最中の彼は、こちらには一瞥もくれず口を開いた。
「ナギさん、用って何ですか。僕はこれから一刻も早く行きたいところがあって、すぐにでもここを出たいんです。出来たら用件は手短におねが、」
「お忙しいところ申し訳ありませんっ、一分だけで良いので話を聞いてください!」
わたしが張り上げた声に、彼はピタリと動きを止めた。
彼が顔を上げるのがコマ送りのように見える。
目が合った途端、彼が大きく目を見開きながら息を呑むのが分かった。
『まさかこんなところまで追いかけてくるなんて―――』
そう顔に書いてある。
『こんなところまで何をしに?』
『今さら何の用?』
『迷惑だ』
そう言われたらどうしよう。ここに来るまで何度もそう考えた。
だけど怖がってばかりじゃ前に進めない。たとえそう言われたとしても、わたしには彼に言わきゃいけないことがある。
胸を突き破りそうなほど暴れている心臓を、落ち着かせている暇はない。とにかく彼に拒否される前に言わなくちゃ。
「アキから逃げ出したわたしが言うなんておかしいかもしれないけど……でもわたしの話を聞いて欲しいの」
わたしがそう言うと、彼が眉間に力を入れた。