お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
すたすたとこちらまで歩いてくると、わたしの上にまたがる男性の肩にぽんっと手を置く。
「──早くどけよ。いつまで茉白ちゃんに触ってんの?」
低い声を出したのは──健くん。
にこりと笑っているけど、声からしてすごく怒っている。
「す、すみませんでした……っ!」
2人の男性はわたしから手を離すとすぐに健くんに土下座。
「ねぇ、おまえがこんなことさせたの?」
健くんは茶髪の先輩へと目を向ける。
ビクッと肩を上げて、先輩が震え出すのがわかった。
「だ、だって、このブスが健に……」
「俺がだれとなにしてようがおまえには関係なくない?」
「……っ」
「次、茉白ちゃんになにかしたらただじゃおかないから」
思いっきり壁を叩く健くん。
どんっ!、と大きな音が響き、先輩はその場に崩れ落ちた。
「おまえらも、顔覚えたから。次俺と茉白ちゃんの視界に入ったらぶん殴るから覚悟してね」
続いて、彼は2人の男性に低い声を出して。
「はいぃっ!」と2人の返事が聞こえれば、わたしのそばにしゃがみこんで、体を支えて起き上がらせてくれる。