お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「おまえら邪魔。早く行きなよ」
男性2人と茶髪の先輩を冷たい目で見ると、3人は立ち上がり。
すごい早さでこの場を出ていった。
「茉白ちゃん、大丈夫?ケガしてない?」
わたしの顔を覗き込んできて。
心配そうな表情をする健くんが視界に映った。
その言葉にこくりとうなずく。
本当は声を出したかったのだが、恐怖がまだ消えていなくて声が出ない。
遅れてやってくるように、カタカタと震え出した体。
あのままだれも来てくれなかったら……と考えると怖くなる。
「ごめんね。俺がまた巻き込んだ……」
ふわりとわたしを包み込む体温。
体温がしっかりと伝わってきて……──健くんに抱きしめられている、と脳が理解するまで時間がかかった。
……温かい。
……いい匂い。
その体温に触れれば恐怖が少しずつドキドキへと変わっていく。
「だ、大丈夫だよ。健くんが助けに来てくれたから……」