お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


小さな声。
だけど、その声は確かに健くんに届いたようで。


「……茉白ちゃんって、俺に怒ったり攻めたりしないよね」


背中にまわった手が、さらに強くわたしを引きよせる。
力強いその手とは裏腹に、声はなんだか弱々しい。


健くんは鋼のメンタルの持ち主だと思っていたけれど……気にしてるのかな。


「健くんはわたしの家のこと知ってるのに仲良くしてくれる友だちだもん……。すごく、大切な人だよ」


巻き込まれたけれど、健くんは助けてくれた恩人で、わたしと仲良くしてくれる友だち。
家のことを知ったうえで仲良くしてくれる人なんてそうそういないから、大切にしたい。

わたしの気持ちが伝われば、と思って彼の袖をきゅっとつかんだ。





「……茉白ちゃんは嬉しい言葉ばっかりくれるなぁ。そんなに俺に甘くていいの?」


聞こえてくる声に「友だちだからね」と返す。






「茉白ちゃん。俺さ、茉白ちゃんと友だち以上になりたいんだけど」


抱きしめられていた手はわたしの髪に触れて。
優しく撫でた。

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