お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
「お嬢、なんですか今のは」
碧は先に口を開くと、わたしの両頬を引っ張った。
「あいつと本当はなにがあったんですか?なにされたんですか?俺には隠しごとしないでなんでも言ってください」
「…………」
「なんですか友だちって。なんですか、“健くん”って」
「……あおひ、心配しひゃいで」
頬を引っ張られているせいで上手く話せない。
心配しないで、と伝えたつもりなんだけど、上手く伝わったかな……。
「心配します。心配しかないです。だから本当のことを言ってください。隠しごとはなしですよ、お嬢」
まっすぐに見つめられる。
……本当のこと。
ヤクザのこととわたしが碧を好きだってことがバレて……それを秘密にしてもらう条件が友だちになることだったの、って?
言えるわけない。
絶対言えない。
この気持ちはまだ碧に伝えられそうにないし、なにより健くんの命が危ないから……!!もういろいろと危ないけど!!
「ほんとーに、健くんとともひゃち!心配しひゃいで!」
まっすぐに見つめ返して、答える。