お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。


わたしは碧よりも先に車を下りて、早足で歩いた。


「お嬢」


後ろから声が聞こえても、無視。
早足で歩いて、少しずつ小走りになって……最終的には走って碧との距離をとる。


けれど、碧は運動神経抜群で足が速く。
すぐにわたしに追いついて、隣を走る。


「お嬢、ドジなんで転びますよ。すぐ止まってください」


わたしは全力で走っているのに、余裕そうな表情の彼。
また“ドジ”なんて言うし、余計ムカつく。


それでも意地になって止まらずに足を動かして、学校へ。


到着した頃には息が乱れて、体はヘトヘト。
朝から無駄な体力を使ってしまった。


「まーしろっ!おはよ!」


昇降口で靴を履き替えていれば、今登校して来たばかりの凛ちゃんが声をかけてきた。


「お、おはよ、凛ちゃん」


息を整えながら挨拶を返す。


「茉白走ってきたの?」
「うん、ちょっといろいろあって……」


「あ!幼なじみくんと一緒に登校して来たんだ?」


靴を履き替えている碧を見ると、にやにやする凛ちゃん。

< 97 / 431 >

この作品をシェア

pagetop