お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
わたしは碧よりも先に車を下りて、早足で歩いた。
「お嬢」
後ろから声が聞こえても、無視。
早足で歩いて、少しずつ小走りになって……最終的には走って碧との距離をとる。
けれど、碧は運動神経抜群で足が速く。
すぐにわたしに追いついて、隣を走る。
「お嬢、ドジなんで転びますよ。すぐ止まってください」
わたしは全力で走っているのに、余裕そうな表情の彼。
また“ドジ”なんて言うし、余計ムカつく。
それでも意地になって止まらずに足を動かして、学校へ。
到着した頃には息が乱れて、体はヘトヘト。
朝から無駄な体力を使ってしまった。
「まーしろっ!おはよ!」
昇降口で靴を履き替えていれば、今登校して来たばかりの凛ちゃんが声をかけてきた。
「お、おはよ、凛ちゃん」
息を整えながら挨拶を返す。
「茉白走ってきたの?」
「うん、ちょっといろいろあって……」
「あ!幼なじみくんと一緒に登校して来たんだ?」
靴を履き替えている碧を見ると、にやにやする凛ちゃん。