お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
こくりとうなずけば、碧はこちらの視線に気づいて。
近くまで来ると、優しく微笑んだ。
「鷹樹さんのお友だちですよね?幼なじみで隣のクラスの小鳥遊碧です。
鷹樹さんと仲良くしてくださり、本当にありがとうございます」
「これはこれは、ご丁寧に……。あたしは、茉白と仲良くさせてもらってる、前の席の鈴宮凛です!」
ぺこりと頭を下げる碧に、凛ちゃんも自己紹介をして頭を下げた。
「鷹樹さんは少々人見知りでとってもバカなので、どうかこれからも仲良くしてあげてください。よろしくお願いします」
「よろしくお願いされます?」
頭を下げ合って、ふふっと笑う凛ちゃん。
「凛ちゃん……っ!碧なんてほっといて行こう!」
わたしは凛ちゃんの腕を引っ張る。
一瞬、碧と目が合ったがわたしはべーっと舌を出してそっぽを向いた。
今さらっと言われた、“とってもバカなので”も聞き逃さなかったんだからね。
「ちょっと待ってね、靴履き替えるから」
凛ちゃんは靴を履き替えて。
腕を引っ張って行こうとした時に。
「おっはよー。茉白ちゃん、碧くん、それから凛ちゃんも」
聞こえてきた元気な声。