双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
「ママー、はーく!」

「マーマ!」

 牧場に行くのが待ちきれないふたりは、玄関で私を急かすように呼ぶ。

「あと少しだけ待ってて」

 急いで身支度を整えて玄関に向かおうとしたけれど、顔を洗うときに外したままの指輪を思い出して引き返す。

「大事なものを忘れていた」

 洗面台に置きっぱなしの指輪にチェーンを通して、首から下げ服の中にそっとしまった。普段は左手薬指にはめているけれど、仕事中だけは失くさないようにチェーンに通している。

 そしてまた仕事が終わればすぐに指輪をはめていた。ある意味、お守りみたいなものだ。

 優星君とは妊娠後にさらに連絡をとる頻度を減らしていき、明叔父さんのところへ引っ越すと同時にスマホも買い替え、完全に連絡を絶った。

 それと両親にも最後のお願いとして、私の行方を尋ねてくる人がいたら親子の縁を切ったから知らないと伝えてほしいと言伝をしてある。
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