双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
 彼女の実家を訪れれば、簡単に行方を掴めると思っていたのが間違いだったようだ。
 星奈の家を後にした帰り道、進む足は重い。

「今、どこでなにをしているんだ?」

 ぽつりと漏らし、立ち止まって空を見上げた。

 同じ空を見上げている? それとも日本にいない? 俺はもう星奈に会うことができないのか……?

「そんなの、無理だ」

 星奈のいない人生など意味がない。きっとなにか事情があったはずだ。大好きな職場を辞め、俺と連絡を絶ったなにかが。

 あらゆる可能性を考え、一度も両親に星奈のことを打ち明けていなかったが探りを入れてみた。

 父は俺に結婚を考えている相手がいることに驚きながらも、反対することはなく、今度会いたいと言ってきた。
 そして母も初めて聞いた反応を見せ、今は仕事に集中するように釘を刺しただけ。

 ふたりが星奈に接触してなにか言った可能性は薄い。だとすれば、ほかにどんな理由がある?

 その答えを出すことができないまま俺はイギリスに戻った。しかしどうにか時間を作って度々帰国し、星奈の行方を探し続けた。

 そしてやっと星奈の親友で一緒にカフェで働いていた友人の飯塚公佳から話を聞くことができたのは、探し始めて二年もの月日が過ぎた頃だった。
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