13番目の恋人
「ここでよく遊んだよねえ」姉が不意に言う。
 私の中では、遊んだ、というより、姉とは十離れているので、遊んでもらったという思い出だ。
 
 露地の飛び石、苔の庭。赤い南天の実、白い椿の花。
 
 いつの間にか、こうやって見ることも少なくなった。ただの風景になってしまって。子供の頃は、全てが物珍しく、綺麗で……
 
 そこに、姉の子供が遊ぶ、飛び石をジャンプ、ジャンプ。上の子が、下の子の手を引く。転けないように、ケガをしないように。
 
「ここでこけても、痛くないけどね、石の上は痛いよ」

 そうそう、私も姉に同じ事を言われたっけ。びっしりとした生えた苔の上は痛くない。けれど石の上で転けたら大変だよって。
 
 こうやって、大事にしてもらってたんだな、私も。
 
「あの実、食べられる?」
 下の子が、小さな手で南天の実を指差す。

「食べられないよ、でも喉飴にはなるんだって」
「あはは! ほんと、小百合と同じこと言ってる!」
 姉が懐かしそうに笑う。
「だって、赤い実って美味しそうなんだもん」
 
 
「幸せに、なってね小百合」
 姉がそう言う。
 
「うん、ありがとう」

 私は幸せになろうと思う。私を見守ってくれた人のためにも。
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