13番目の恋人
「うまいな……」俺が生菓子を口に運んでそう言うと
「そうでしょう?」
 小百合が得意気に小さな鼻を膨らませた。俺がキャトルカールを褒められたときもこんな顔をしていたのか。育ってきた環境、ルーツは違えど、とても誇らしく思う気持ちは同じなのだと思う。
 
「またあ、夕食が食べられなくなっちゃう。今日は夕食も楽しみにしているのに」
「いいじゃないか、たくさん食べたら」
 
 俺がそう言うとじとりと睨まれてしまう。
 
「ああ、ドレスを気にしているのか?」
 結婚式までに痩せるとか何とか言っていたっけ。
 
「それもあるけど、『菓子屋の娘が太っては駄目』と祖母にずっと言われていて……ああ、和菓子食べて太ってるんだと思われるでしょう?」
「なるほど、そうか」
 
 それから少し恥ずかしそうにもじもじすると、パッと目を上げた。
 
「これからは洋菓子屋の奥さんになるのだもの、洋菓子はカロリーが高いと思われるでしょ」
 
 ……カロリーは容赦ないが、『奥さん』の響きに胸が擽られ、そっと頬に触れる。その手に小百合が小さな白い手を添える。
 
「幸せ太りだって、みんな思うだけだよ」
 
 小百合は艶やかな瞳を数回瞬き「恥ずかしい」と幸せそうに笑った。
 
 それから、俺の顔を窺う。
 「困らせてますか、私」
 「そうだなあ、可愛いすぎて……困る」
 
 いいんじゃないか、少し太ったって。そう思える細い体を引き寄せた。
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