13番目の恋人
大宮くんは少し驚いた様に目を開いたが、また直ぐに笑って
「はは、知ってっし! 」そう言うと、
「いただきまーす」と、手を合わせて食べ始めた。

まだ彼を見ていた私に、「食べないの?」と、首を傾げて見せた。

「あ、食べる、食べます」
私も、手を合わせて、食事をした。

「大宮くん、今日飲んで帰るの?」
万里子さんは室長との話が終わったのか大宮くんに訊いた。

「はーい。ま、早く終わったらーって感じっすね」
と、チラリと室長を見た。

「大丈夫だろ、今週は。今のうち休んどけ」
「だ、そうでーす」
「じゃあ、香坂さんも誘ってあげて。親睦を深めたいんだってさ」
「いっすよ、てか、遅! 今頃親睦!? まあ、秘書室は孤立っぽいもんな」

大宮くんは、一人で疑問を解決してるみたい。おかしくなって笑った。

「……へえ、笑うんだ」
「それは、そうでしょ」
代わりに万里子さんが答える。

「彼女、誤解されやすいけど、純粋な子だから、お願いね、大宮くん」
万里子さんが私の事をそう託した。

……どんな誤解をされているのか、私にはわからなかったけれど、とにかく何か誤解されているのか、私は。
「室長、見張って下さいます?」
「え、何?」
万里子さんにそう言われ、食事をしていて聞いていなかったのだろう室長が顔を上げた。
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