13番目の恋人
顔を上げた室長と目が合って、ここのテーブルは比較的大きいけれど、あの80センチのラウンドテーブルだったら、もう少し近くで見られたのかな……。

……あれ、今、何考えてたっけ。

 横で万里子さんが室長に説明している声も何だか遠くで聞いているようで、私は顔に熱が熱くなってきて、火照っているのだと気づいた。

「ああ、別に構わないけど」

室長の声にハッと現実に戻った。

「……あの……?」
「俺も飲み会の同席構わない?」
「え……はい」
「ん。あ、鰤の塩焼き旨いよね」

そう言われて、手をつけてなかった鰤の塩焼きに慌てて手をつけた。そっと見ると、彼も塩焼きを選んでいて、なぜだか少し嬉しくなった。

「香坂さん来るなら参加したい人、結構いるんじゃないかなー」
「徐々にでいいわよ」
「んー、監視役いるし大丈夫っしょ」

万里子さんと大宮くんが二人でそう話しているので、私はもくもくと食べた。

「俺、最近こんなの旨いと思うようになって、年かなあって思ってたんだけど、君も結構渋い好みだね」

二つ選べる小鉢も、どうやら室長と同じものを選んでいたらしい。

「嬉しい」
「……渋いって言われるのが? はは、若いのに変な子だなあ」

室長と好みが一緒で嬉しいと言ってしまって自分でも驚いた。

確かに、変な子だなあ、私って。

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